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人材育成のフレームワーク8選|目的別の選び方と活用例を解説

はじめに
社員の育成方法を見直したいものの、何から手をつければよいのかわからず、悩むことはありませんか。
そんなときに活用したいのが、人材育成の「フレームワーク」です。
フレームワークとは、物事を考えたり、課題を整理したりする際に用いる、一定の枠組みや考え方のことです。
本記事では、人材育成に活用できる8つのフレームワークについて、それぞれの特徴や具体的な活用方法、選び方を解説します。
人材育成に活用できる8つのフレームワーク

HPI
HPI(Human Performance Improvement)は、組織や社員に求められる成果と現状との差を明らかにし、その原因を分析して改善につなげるためのフレームワークです。
例えば、受注処理で商品の数量や納期の入力ミスが繰り返し発生しているとします。
原因を調べた結果、社員が入力手順を十分に理解していない場合は、研修や指導で正しい入力手順を教えます。
一方で、システム画面の入力項目が分かりにくい、あるいは入力した数量や納期を注文書と照合する手順が定められていない場合は、システムや業務手順の改善が必要になります。
HPIでは、業務上の問題を社員の知識や能力の不足だけで捉えず、業務手順や職場環境なども含めて原因を調べます。
そのうえで、社員への教育・指導や業務の仕組みの見直しなど、原因に応じた改善策を検討します。
コンピテンシー
コンピテンシーとは、仕事で高い成果を上げている社員に共通して見られる行動特性のことです。
こうした行動特性を分析し、社員の評価項目を設定したり、ほかの社員に身につけてほしい行動を明確にしたりする際に活用します。
例えば、継続して売上目標を達成している複数の営業担当者の行動を分析した結果、顧客の要望を聞くだけでなく、質問を重ねて背景にある課題を把握してから提案する、という共通点があることがわかったとします。
そこで、ほかの営業担当者も同じ行動ができるよう、「顧客の課題を掘り下げる」ことを育成の基準に設定し、商談研修やロールプレイングを通じて指導します。
このように、成果につながると考えられる行動を組織内に広げ、社員全体の営業力向上を目指すのが、コンピテンシーを活用した人材育成です。
カッツモデル
カッツモデルとは、アメリカの経営学者ロバート・L・カッツが提唱した、管理職の階層や役割に応じて必要な能力を考えるためのフレームワークです。
カッツモデルでは、管理職に求められる能力を次の3つのスキルに分類しています。
- テクニカルスキル(業務遂行能力): 業務を遂行するために必要な専門知識や技術
- ヒューマンスキル(対人関係能力): 他者と円滑にコミュニケーションを取り、協力して仕事を進める能力
- コンセプチュアルスキル(概念化能力): 複雑な状況を分析し、物事の本質や全体像を捉える能力
カッツモデルは、現場に近い管理職ほどテクニカルスキルの重要性が高く、経営層に近づくほどコンセプチュアルスキルの重要性が高いという考え方です。
>>>コンセプチュアルスキルの特徴や具体例については、関連記事「コンセプチュアルスキルとは?」で詳しく解説しています。
例えば、現場の課長には、業務に関する専門知識や部下を指導する能力が求められます。
一方、複数の部門を統括する部長には、部門間の関係を把握し、組織全体の課題を捉える能力がより重要になります。
このように、カッツモデルを活用することで、管理職の階層や役割に応じて必要なスキルを整理し、それぞれに合った研修や育成内容を検討することができます。
SMARTの法則
SMARTの法則とは、目標を設定する際に、具体性や達成可能性など5つの要素から、その目標が適切かどうかを確認するためのフレームワークです。
SMARTという名称は、次の5つの要素の頭文字を組み合わせたものです。
- Specific(具体的): 何を達成するのかが明確である
- Measurable(測定可能): 目標の達成状況を確認できる
- Achievable(達成可能): 現実的に達成できる目標である
- Relevant(関連性): 業務や育成の目的に合っている
- Time-bound(期限): いつまでに達成するのかが決まっている
例えば、新入社員の育成目標を「電話対応ができるようになる」と設定した場合、何ができれば目標達成と言えるのかが曖昧です。
そこで、SMARTの5つの要素に沿って、目標の内容を具体化します。
- S(具体的): 基本的な問い合わせに対して、社内マニュアルに沿って回答できる
- M(測定可能): 電話応対のロールプレイングで、あらかじめ定めた評価基準を満たす
- A(達成可能): 新入社員の経験や研修期間を踏まえ、達成可能な水準に設定する
- R(関連性): 配属先で、実際に担当する電話応対業務に必要な能力を身につける
- T(期限): 入社3か月後までに達成する
このように、SMARTの5つの要素に沿って目標を具体化することで、社員は何をいつまでに身につける必要があるのかがわかり、指導する側も達成状況を確認しながら育成を進めることができます。
ADDIE
ADDIE(アディー)とは、研修の企画から実施、評価・改善までを5つの工程に分け、計画的に進めるためのフレームワークです。
次の5つの工程の頭文字から名付けられています。
- Analysis(分析): 研修の対象者が抱える課題や身につける必要がある知識・スキルを調べる
- Design(設計): 研修の目標を決め、学習内容や実施方法、評価方法を設計する
- Development(開発): 研修で使用する教材や演習課題などを作成する
- Implementation(実施): 設計した内容に沿って研修を実施する
- Evaluation(評価): 研修の目標が達成されたかを確認し、必要に応じて内容を改善する
例えば、新任管理職向けの研修にADDIEを活用する場合、次のようになります。
- A(分析): 新任管理職へのヒアリングや上司からの情報を基に、部下への業務指示やフィードバックに課題があることを把握する
- D(設計): 適切な業務指示やフィードバックができることを目標に、講義とロールプレイングを組み合わせた研修を計画する
- D(開発): 講義資料や、業務指示・フィードバックを練習するためのロールプレイング課題を作成する
- I(実施): 作成した教材を使用して講義とロールプレイングを実施する
- E(評価): 研修直後のロールプレイングで習得状況を確認し、一定期間後には職場での実践状況も確認する
なお、ADDIEでは、研修の実施後だけでなく、企画や設計などの各工程でも内容を確認し、必要に応じて見直します。
7:2:1の法則(ロミンガーの法則)
7:2:1の法則とは、管理職やリーダーの成長につながった学習経験を「実務経験が7割」「上司や周囲との関わりが2割」「研修や学習が1割」として示した考え方です。
「70:20:10の法則」や「ロミンガーの法則」とも呼ばれています。
アメリカのCenter for Creative Leadership(CCL)が行った、管理職やリーダーの成長経験に関する研究を基に、ロミンガー社の創業者であるマイケル・ロンバルドとロバート・アイチンガーによって体系化され広まりました。
3つの数字は、次のような学習経験を表しています。
- 7(実務経験): 新しい業務への挑戦や難しい課題への対応など、実際の仕事から学ぶ
- 2(周囲との関わり): 上司・先輩からの指導やフィードバック、同僚との協力などから学ぶ
- 1(研修や学習): 集合研修やeラーニング、読書などを通じて知識やスキルを学ぶ
例えば、管理職候補の育成計画を立てる場合、次のような取り組みが考えられます。
- 7(実務経験): 後輩の指導や小規模なチームの業務管理を任せる
- 2(周囲との関わり): 上司が定期的に指導状況を確認し、アドバイスやフィードバックを行う
- 1(研修や学習): 部下の指導方法やマネジメントの基礎を研修で学ぶ
なお、7:2:1という割合を、育成時間や予算にそのまま当てはめる必要はありません。
育成計画を立てる際には、研修の内容だけでなく、社員にどのような業務を任せるのか、誰が指導やフィードバックを担当するのかについても検討します。
7:2:1の法則を活用できる場面や具体的な育成計画の立て方については、関連記事「7:2:1の法則(ロミンガーの法則)って何?」で詳しく解説しています。
コルブの経験学習モデル
コルブの経験学習モデルとは、アメリカの教育学者デービッド・コルブが提唱した、経験を通じて学び、成長する過程を4つに分けたフレームワークです。
このモデルでは、経験を振り返って学びを得るだけでなく、その学びを業務で試すまでの過程を、次の4つの段階に分けています。
① 具体的経験: 実際に業務を行い、成功や失敗などを経験する
② 内省的観察: 経験を振り返り、うまくいった点や問題が起きた原因を考える
③ 抽象的概念化: 振り返りから得た気づきを整理し、ほかの場面でも使える考え方や方法にまとめる
④ 能動的実験: 考えた方法を実際の業務で試し、その結果を次の経験につなげる
例えば、社員が別の担当者に業務を引き継いだ際、作業期限の認識に食い違いがあり、対応が遅れたとします。
この事例を4つの段階に当てはめると、次のようになります。
① 具体的経験: 業務を引き継いだものの、担当者間で作業期限の認識が異なり、対応が遅れた
② 内省的観察: 引き継ぎ内容を振り返り、作業期限を明確に伝えていなかったことに気づく
③ 抽象的概念化: 業務を引き継ぐ際には、作業内容だけでなく、担当者や期限も明確にする必要があると整理する
④ 能動的実験: 次の引き継ぎでは、作業内容・担当者・期限を記載した一覧を使い、認識の違いが生じないか確かめる
コルブの経験学習モデルを人材育成に活用する場合、社員に業務を経験させるだけでなく、上司が振り返りの機会を設け、本人が改善方法を考えて次の仕事で実践できるようにサポートすることがポイントです。

カークパトリックモデル
カークパトリックモデルとは、アメリカの経営学者ドナルド・カークパトリックが提唱した、研修の効果を4つの段階に分けて評価するためのフレームワークです。
研修後の受講者アンケートによる評価だけでなく、知識・スキルの習得状況や職場での行動の変化、業務上の成果までを、次の4段階で評価します。
① 反応(Reaction): 受講者が研修をどう評価したか
② 学習(Learning): 研修で必要な知識やスキルを習得できたか
③ 行動(Behavior): 研修で学んだことを実際の業務で実践しているか
④ 結果(Results): 研修で目指した業務上・組織上の成果が得られたか
また、カークパトリックモデルは、研修の効果を評価するだけでなく、研修を設計する際にも活用することができます。
研修を設計する際には、まず④「結果」で目指す成果を明確にし、その成果を得るために必要な③「行動」、②「学習」を考えます。
例えば、営業担当者のヒアリング力を高める研修では、商談化率の向上を目指す成果として設定します。
そのうえで、顧客の課題を掘り下げて質問するという行動を定め、そのために必要な質問方法を研修で学ぶ内容として設定します。
研修を実施した後は、次のように効果を確認、評価します。
① 反応: アンケートで「研修内容が実務に関連していたか」「理解しやすかったか」を確認
② 学習: ロールプレイングで「顧客の課題を聞き出すための質問ができるようになったか」を確認
③ 行動: 研修後の実際の商談で「学んだ質問方法を使っているか」を上司が確認
④ 結果: 研修前後の商談化率を比較し、目標の達成状況を評価
ただし、商談化率は研修以外の要因でも変動するため、数値の変化だけで研修の効果を判断しないよう注意が必要です。
自社に合ったフレームワークの選び方
まずは、自社の人材育成で「何が課題となっているのか」「何を改善したいのか」を明確にします。
ここでは、具体的な課題例と比較表を交えながら、フレームワークの選び方を解説します。
解決したい課題や目的を明確にする
フレームワークを選ぶ際には、まず自社の人材育成で何が課題となっているのか、何を改善したいのかを明確にします。
例えば、「管理職が育たない」という課題があった場合、その背景には次のような問題が考えられます。
- 管理職に必要な能力が整理されておらず、何を育成すべきか決まっていない
- 研修は実施しているものの、学んだ内容が実際の業務で使われていない
- 研修後の評価を行っておらず、育成の成果を把握できていない
同じ「管理職が育たない」という課題でも、必要な能力を整理するのか、実務での行動を改善するのか、研修の効果を評価するのかによって、適したフレームワークは異なります。
課題や目的に合ったフレームワークを選ぶ
自社の課題や育成目的が明確になったら、それに適したフレームワークを選びます。
以下の表では、人材育成における主な課題や目的に対して、8つのフレームワークがどの程度適しているかを示しています。
まずは、左端の「課題・目的」の中に、自社の状況に近い項目がないか確認してみてください。
そのうえで、第1章で紹介した特徴や活用方法を参考に、◎や○が付いているフレームワークを自社の課題に活用できるかどうかを考えます。
※ ◎:課題・目的に最適 ○:課題・目的に活用できる △:条件によっては活用できる -:課題・目的との関連性が低い
※なお、上記の表は、フレームワークを選ぶ際の目安を示したものです。実際にどのフレームワークを活用するかは、自社の課題や育成目的、社員の状況などを踏まえて判断してください。
また、育成の目的によっては、複数のフレームワークを組み合わせることで、必要な能力の整理から目標設定、研修の設計までを進めることができます。
例えば、管理職向けの研修を企画する場合、カッツモデルで必要な能力を整理し、SMARTの法則で育成目標を設定したうえで、ADDIEに沿って研修を設計する、という活用方法もあります。
まとめ
人材育成のフレームワークは、種類によって用途が異なるため、どれを使うかは自社の課題や育成目的によって変わります。
まずは、第2章の比較表を参考に、自社に当てはまる課題や目的を確認してみてください。
そのうえで、各フレームワークの特徴や活用方法を確認し、自社の状況に合うものを育成計画の作成や研修内容の見直しなどに取り入れてみてはいかがでしょうか。
ステッド編集部 人材育成コンテンツ担当:榎本
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