記事公開日:
属人化を解消するステップとは?発生原因や放置のリスクも解説

属人化が起こる4つの原因
属人化は、特定の担当者しか業務内容やノウハウを把握していない状態のことをいいます。
一見すると、仕事が問題なく回っているように見えても、実際には、特定の人の経験や判断に頼っているケースがあります。その状態が続くと、担当者が不在になったときに業務が止まったり、引き継ぎがうまく進まなかったりするリスクが高まります。
ここでは、企業で属人化が起こりやすい代表的な4つの原因を紹介します。
業務マニュアルが整備されていない
業務マニュアルが整備されていないと、仕事の進め方が担当者の頭の中だけに残ってしまいます。手順や判断基準が文書化されていないため、他の人が同じ業務を担当しようとしても、何を見て進めればよいのか分かりません。
顧客対応、見積作成、システム運用などは、進め方に一定のルールや判断が必要です。それにもかかわらず、担当者だけが流れを把握している状態では、異動や退職が起きたときに引き継ぎが難しくなります。また、対応する人によって判断や品質にばらつきが出る可能性もあります。
業務内容を誰でも確認できる形で整理・文書化し、必要に応じて更新していくことが、属人化を防ぐ第一歩です。
業務の専門性が高く後任が育たない
専門性の高い業務は、属人化しやすくなります。知識や経験を身につけるまでに時間がかかるため、すぐに代わりの担当者を育てることが難しいからです。
法務、経理、システム開発、設備保守などの専門職では、業務を理解するまでに数か月から数年かかることもあります。そのため、結果的に同じ担当者が長く担当し続け、業務知識がその人に蓄積されていきます。
専門性の高い業務こそ、教育計画を立てたり、複数人で対応できる体制を整えることが重要です。
新人教育や引き継ぎのための時間が取れない
日常業務に追われて、教育や引き継ぎの時間を確保できないことも、属人化を招く要因です。担当者自身も忙しいため、教える時間を確保できず、結果として「分かる人がそのまま対応する」状態が続いてしまいます。
人手不足の職場では「教えるより自分で対応したほうが早い」という状況が続きやすくなります。こうした状態が続くと、業務ノウハウが共有されず、新人や後任者が育たない状態が長期化します。
教育や引き継ぎは、余裕があるときに行うものではなく、業務の一部として計画的に組み込む必要があります。ここを後回しにすると、属人化はさらに進みやすくなります。
ナレッジ共有の仕組みや文化がない
ナレッジ共有の仕組みや文化がない組織では、属人化しやすくなります。情報共有が個人の判断に任されるため、知識やノウハウが組織に蓄積されないためです。
会議の議事録が残されない、業務改善の事例が共有されない、質問しづらい雰囲気があるといった職場では、同じ問題が何度も発生したり、特定の担当者に問い合わせが集中したりします。
大切なのは、知識やノウハウを共有することが、日常業務の中で当たり前になっている状態をつくることです。
属人化を放置することで発生するリスク
属人化を放置すると、業務の停滞や生産性の低下、人材流出などのリスクが高まります。特定の担当者だけが業務内容やノウハウを把握している状態では、その担当者が休職・退職・異動した際に、業務を継続できなくなるためです。
たとえば、顧客対応やシステム管理、経理業務などが一人に依存している場合、担当者の不在によって業務が停止し、取引先への対応遅延や機会損失につながる可能性があります。また、問い合わせや判断が特定の人に集中することで、業務負荷が偏り、長時間労働や離職の原因になることもあります。
さらに、ノウハウが組織に蓄積されないため、業務改善や人材育成が進まず、企業全体の競争力低下を招く恐れがあります。
属人化は、一時的な効率向上につながる場合もありますが、長期的には組織運営に大きな影響を与えるため、早期の対策が必要です。
属人化を解消する6つのステップ

属人化を解消するためには、業務を可視化し、知識やノウハウを組織全体で共有できる仕組みを構築することが重要です。
単にマニュアルを作成するだけでは十分ではなく、業務の標準化や情報共有の定着までを含めて、取り組む必要があります。
ここでは、多くの企業で実践されている属人化解消の具体的な6つのステップを紹介します。
業務を棚卸して内容を可視化する
属人化を解消する第一歩は、現在行われている業務を棚卸しして、可視化することです。どの業務が、誰によって、どのように行われているのかを把握できなければ、属人化の状況を正確に判断できないためです。
まずは、担当者ごとの業務内容、作業手順、使用しているツール、関係部署などを一覧化します。業務フロー図や業務一覧表を作成すると、業務の全体像を把握しやすくなります。
「その人しか分からない業務」「引き継ぎに時間がかかる業務」「確認が特定の人に集中している業務」を見つけることが目的です。
属人化の解消が必要な業務を見つける
業務を洗い出したら、次に見直すべき業務を絞り込みます。影響の大きい業務から着手することで、効率的に属人化を解消できます。
たとえば、顧客対応、経理処理、システム管理など、担当者が不在になると業務が止まりやすいものは、優先して見直すべき業務です。また、「その人に聞かないと進まない業務」は、すでに属人化が進んでいる可能性があります。
限られた時間で進めるためにも、影響が大きい業務から順番に見直すことが現実的です。
業務手順のマニュアル化・標準化をすすめる
属人化を防ぐためには、担当者の経験や勘に依存している業務をマニュアル化し、標準化することが欠かせません。誰が担当しても、一定の品質で業務を遂行できる状態を目指す必要があります。
マニュアルには作業手順だけでなく、判断基準や注意点、トラブル発生時の対応方法まで記載しましょう。どの情報を確認するのか、どこで判断が必要になるのか、迷ったときに誰へ確認するのかまで書いておくと、実際の業務で使いやすくなります。
文章だけで伝わりにくい業務は、画面キャプチャや図を入れると理解しやすくなります。担当者の経験や勘に頼っていた部分を、他の人も確認できる形にすることが標準化の目的です。
ナレッジ共有を仕組化する
マニュアルを作っても、共有されなければ使われません。個人のパソコンや一部のフォルダに保存されているだけでは、必要なときに見つけられず、結局また担当者に確認することになります。
業務ノウハウや過去の対応事例は、社内で探しやすい場所に集約します。社内Wiki、ナレッジベース、共有フォルダなど、会社の規模や運用に合った方法で構いません。あわせて、定例会議や勉強会の中で共有する時間を設けることで、情報共有を日常業務の一部にしやすくなります。
ナレッジ共有は、担当者の善意に任せるのではなく、業務の流れの中に組み込むことが大切です。
必要に応じてITツールを導入・活用する
業務情報が増えてくると、紙や個人管理だけでは限界があります。必要な資料が見つからない、最新版が分からない、誰が何を担当しているのか見えない。こうした状態が続くと、情報共有そのものが負担になります。
業務管理ツール、文書管理システム、チャットツールなどを活用すると、必要な情報を探しやすくなり、情報共有の負担も軽減できます。また、定型業務を自動化すれば、特定の担当者に依存していた作業そのものを減らすこともできます。
ただし、ツールを入れただけで属人化が解消するわけではありません。どこに情報を残すのか、誰が更新するのか、どのタイミングで確認するのかを決めておくことが前提です。
属人化の解消を評価するルールを決める
属人化対策を継続させるためには、取り組みを評価するルールが必要です。評価基準がなければ、情報共有やマニュアル作成が後回しになってしまいます。
マニュアルの作成数や更新頻度、複数担当者による業務対応率、ナレッジ共有件数などを指標として設定できます。人事評価に組み込む場合も、単に「共有したかどうか」だけで見るのではなく、業務改善や引き継ぎのしやすさにつながっているかを見ることが大切です。
属人化の解消は、マニュアルを作って終わりではありません。業務の進め方を見直し、共有し、更新し続けることで、組織に定着していきます。
まとめ
属人化は、担当者だけの問題ではありません。業務の進め方や判断基準が共有されていないことで、結果的に一部の人へ仕事が集中してしまう状態です。
普段は問題なく業務が回っているように見えても、担当者が休んだり、異動・退職したりしたときに影響が表れます。「この業務は誰に聞けばよいのか」「どの手順で進めればよいのか」が分からなければ、確認に時間がかかり、対応の遅れや手戻りも発生します。
属人化を防ぐには、まず業務の状態を見えるようにすることが必要です。そのうえで、影響の大きい業務から順に、手順や判断基準を整理し、マニュアルやナレッジとして共有できる形にしていきます。
ただし、マニュアルを作るだけで属人化が解消するわけではありません。作ったものが使われ、更新され、必要なときに確認できる状態になっていて、はじめて意味があります。
属人化対策は一度実施して終わりではなく、組織全体で継続的に改善を重ねることで、安定した業務運営と生産性向上につながります。
ステッド編集部 人材育成コンテンツ担当:榎本
人材育成や組織づくりに関する情報を発信しています。企業の教育施策や学習環境づくりに役立つ情報を、現場目線で分かりやすくお届けします。

